例えば、ブレーキキャリパーサポートを選定する(作る)際に何を重要視するか?
ブレーキ関係のパーツは特にシビアな要素が求められます。
・剛性があり、変形しにくいこと。(弾性域での強さ)
・軽いこと。(比重)
・強度を保ち信頼性があること。(引張強さ)
がポイントになると思います。
力が加わったときに変位が大きければ正常に機能しなくなります。
重くても困りますし、信頼性が無ければいけません。
では、どのような素材を使うのか?
剛性が有り、変形しにくいこと。
単純に考えて、加わる力に対するバネ的な強さ(変位量の少なさ)を
意味する弾性係数の一つヤング率を示すと、Fig.2のようになります。
図を見れば明らかですが、ステンレスが最も強く、チタン、アルミ合金が続きます。
ですから、剛性の観点から言えば
ブレーキキャリパーサポートをステンレスで作れば
ブレーキ時でもキャリパーの位置をしっかりと保持し
おそらく最も正確な操作性を実現できることになります。
次にバネ下重量を軽減するために軽さを重視した場合、
Fig.2に示した比重のグラフのように、
剛性があるはずのステンレスは圧倒的に重くなってしまいます。
アルミが最も軽くステンレスに対して36%程度、チタンが軽く57%程度になります。
バイクは軽量重視ですから強力であってもステンレスの使用は
少なくともキャリパーサポートには不向きと言うことになります。
強さの信頼性についてはどうでしょうか?
それを考えると挙げられる要素がいくつかありますが、
・限界強度の高さ
・強度が長持ちすること
に注目して、キャリパーサポートではなくボルトについてですが、
Metalizeでは以下のような実験をして見ました。
ボルトの破断試験。
対象は
パーツショップで扱われている最もポピュラーなA7075 製のテーパーアルミボルト
一般的なSUS304製のステンレスボルト
Metaizeで製作した64チタンボルト
それぞれ呼び径M6 のものに荷重をかけ破断までに要する力「引張強さ」を測定してみました。
その結果がFig.3のようになります。
図にはそれぞれカタログによる物性値スペックも示してあります。
オレンジで示した実験結果を見ると64チタンボルトの引張り強さは隔絶した値を示していることがわかります。次にステンレスボルト、アルミボルトが続きます。
「64チタンボルトはM6で実に2t以上の荷重に耐える強さを持っている。」ことがこの実験によりわかりました。
また、注目すべきことは、
「アルミボルトの実験値がカタログによる物性値と比較してかなり低い値を示した。」ということです。
これにつきましては今回実験した試験所の技術者によれば
「A7075-T6に変質が起こっている可能性がある。」
とのことでした。
今回用いたアルミボルトは実験時まで未使用でしたが、長い間売れなかったボルトキットのものを試験用に調達したため変質による劣化が起こっていた可能性が考えられます。
チタンとステンレスの劣化についてはもちろんアルミニウムほど弱くありません。特にチタンは各分野において画期的な効果やブレークスルーをもたらすほどの耐腐食性をもっていますからその特性は保たれます。
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以上のことを総合的に考えると
強度機能材としてチタンが最もふさわしい、ということが結論になると思います
。
しかし、上に示した事柄以外にももっと考慮しなければいけないことがあります。
それにつきましては今後の調査や実験で色々と具体的に示していく予定です。
追記:
材料は全て機能材ですからチタン以外がまったく良くないというわけではありません。
材料は適材適所に用いることが最も賢明な使い方です。材料価格、製作価格を抑え、短期集中で軽さを重視して使うならばアルミを選定すべきですし、それより製作価格が上がりますがそれでもコストを抑えて信頼性を考えればステンレスを選定すべきです。
(但し、アルミにもステンレスにも膨大な種類のものがありますので注意が必要です。
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